徒然カオスエンジェルズ(第三章)

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2005/10/24  王子ゼス「何が重いっていうんだ! 僕はただ永遠に時を留めようとしただけなのに!」
アスキーたちは階段を降りた。
ミノタウロス「はあはあ・・・ 畜生、あの血色悪女め!」
アスキー「どういう構造なんだろう。ふつう、あんなに倒す前に何かおかしいと気付くんじゃないですか?」

バキッ

アスキー「ぐほっ」
ミノタウロス「アンタも57回倒してやろうか?」
アスキー「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
アスキー「姐さん、扉がありますぜ」
ミノタウロス「ああ・・・ ここが爺さんの部屋の入口さ」
アスキー「御存知の方でげすか」
ミノタウロス「飲み仲間さ」

アスキーたちは扉を開けた。むわっと酒の臭いが拡がる。
アスキー「うわっ酒くさっ!」
???「くさいとは聞き捨てならん物言いじゃのう」
アスキー「えっ?」
部屋には一人の老人、コイツも化け物… が酒瓶を片手に座っていた。
老人「酒を莫迦にするとは許せんのう、制裁を加える」
老人は呪文を唱えた!
アスキー「ぐわっ! あ、足の裏が痒く・・・」
老人「水虫の魔法をかけた。お主は一生水虫じゃあ」
 
2005/10/27  子曰く・・
ミノタウロス「じいさん、そのへんでいいだろ」
じいさん「おお、牛娘。今日はちょいとご機嫌斜めじゃの」
老人はミノタウロスのほうを見ると、ニヤリと笑った。
アスキー「いやいや、斜めなんてものじゃあr」

バキッ

ミノタウロス「うるさい!」
アスキー「そ、そろそろ本当に死にますって・・・」
じいさん「ふぉっふぉ、若造、中々見所がある奴じゃ。並の度胸の持ち主じゃ、ああは言えぬわい」
アスキー「お、お褒めにあずかり・・・」
じいさん「わしはスフィンクスじゃ。アスキーよ、よろしくな」
アスキー「えっ、どうして俺の名前を・・・?」
スフィンクス「賢者とは、そうしたものなのじゃよ」
じいさんは満足げに笑った。
スフィンクス「さて。お主等がここに来た理由じゃが・・・」
ミノタウロス「じいさん、アンタはわかってるんだろ? アタシたちはよくわからんまま来ちまったけどさ」
スフィンクス「さて、どうかのう。謎は、謎のままにして置くのも悪くはない」
 
2005/11/04  教えて賢者様
ミノタウロス「じいさん、教えてくれよ! じゃないと暴れるぞ」
スフィンクス「ふむ、しょうがないの。暴れられると酒瓶が壊れるよって勘弁じゃい。では、何から教えようかのう」
アスキー「んーと・・・」

ア、なんでバンパイアは俺たちを逃がしたんだ?
イ、むしろ、アイツを倒す方法を教えてくれよ!
ウ、そもそも何でお前は男なんだ!
エ、ギャルのパンティーが欲しい
 
2005/11/05  コマンド形式アドベンチャーは総当り
アスキー「なんでバンパイアは俺たちを逃がしたんだ?」
スフィンクス「格下の敵を倒しても経験値少ないからのぅ」
ミノタウロス「あー、納得」
アスキー「納得しちゃうの!?」

アスキー「むしろ、アイツを倒す方法を教えてくれよ!」
スフィンクス「吸血鬼の弱点はなんじゃ?」
アスキー「そりゃ十字架」
ミノタウロス「そうか!4階にある十字架を使うんだね!」
アスキー「そんなのあるんすか?」
ミノタウロス「ある。っていうかなんでチンピラ口調なのよアンタ」

アスキー「そもそも何でお前は男なんだ!」
スフィンクス「忌まわしき呪いによって老人の姿に変えられた亡国皇女、ソレがワシの正体じゃ」
アスキー「マジかよ!」
スフィンクス「熱いディープキスで元の姿に戻れるかものゥ」
アスキー「……考えさせておいてくれ」
ミノタウロス「私の前でやらなきゃいいよ。アンタの人生だし」

アスキー「ギャルのパンティーが欲しい」
スフィンクス「つまりそこの姐さんはギャルと認めてないと」
アスキー「……え?」
スフィンクス「そうであろう? 認めているならそこな姐さんに頼めばよい事ではないか」
ミノタウロス「……ほう。おい」
アスキー「ハ、ハイナンデショーオジョーサマ。アァモシカシテワタシメニぱんてぃーヲサズケテ」
ミノタウロス「今更遅いんだよッ!」

ミノタウロスの攻撃!
アスキーはとにかく死ぬかと思うぐらいダメージを受けた!
スフィンクス「宵の口 血祭り騒ぐ 宴かな −スフィンクス」
 
2005/11/05  フラグは立った
15分後。
アスキーはミノタウロスに担がれて4階の片隅にいた。
アスキー「姐さん、この部屋は?」
ミノタウロス「倉庫だ。でも何故か塔の1階から最上階を繋ぐメインルートの階段もある」
アスキー「へんな作りの塔だな…」
ミノタウロス「アタシが作ったわけじゃない、文句言うな」
アスキー「へいへい」

ミノタウロスの足がふと止まる。
ミノタウロス「あったあった。これさえあれば・・・」
アスキー「こ、これは十字架!」
ミノタウロス「たぶん、これであの不死身女をブン殴れば奴を倒せるはずだ」
アスキー「宝石がいっぱいついていますね」
ミノタウロス「結構な値打ちモンなんだろうけどね。この塔に金って概念はないからな、宝石も只の石ころさね」
 
2005/11/08  さぁて、攻略といきますかね
ミノタウロス「よっしゃ行くよ! あの低血圧女め… 辞世の句でも用意して待ってな!」
アスキー「よっ! 姐さんかっこいい!」
ミノタウロス「あたぼうよ!」

ふたりはずんずか歩いて行った。
その頃。スフィンクスの部屋にて。
スフィンクス「…………」
自称賢者が難しい顔をしていた。
スフィンクス「…………」
スフィンクス「……うぅーんむ……」
老人は頭をぼりぼりと掻いた。
スフィンクス「そういう倒し方もアリ、かのう… 実態としては吸血鬼の嬢ちゃんがアスキー達を逃がしたのは、単に自分にとっての危険地帯に敵が陣取ったからなのじゃが…」

その頃。6階への階段へと続く通路。
バンパイアが、爪を研ぎながら難しい顔をしていた。
バンパイア「…………」
少女は首を捻った。
バンパイア「参ったわね… アレを武器として装備した人は今まで居なかったから… 自分でもどうなるかわからないわ…」
 
2005/11/12  再挑戦
ミノタウロス「さぁて! 来たよ! 今度こそ張り倒してやる!」
アスキーたちは再び、バンパイアの前に立った。
バンパイア「そんなちっぽけな十字架で、私を倒せると思ってるの? やっぱり脳味噌筋肉女なだけあるわね…」
アスキー「脳味噌だけではありません。精神も、神経も…」

バキッ

ミノタウロス「見ての通りさ。アンタの言うちっぽけな十字架でも、アスキーを瀕死に出来る程度の破壊力はあるさ」
アスキー「じ、十字架かどうかの問題では…」

バンパイア「はあ… まあいいわ。何度も起き上がるのは疲れるから、今回は私も助っ人を呼ばせてもらったわ」
ミノタウロス「何ィ!」
バンパイア「さ、出てきなさい」
バンパイアの呼ぶ声に合わせて、物陰からモンスターが現れた!
ミステリアスな紅い瞳、ショートカットの黒髪、毛皮を身に纏い青白いオーラを放つ少女だった。

アスキー「姐さん、あのモンスターは?」
ミノタウロス「ケルベロス… "5階の癒し系"の異名を取る猛者だ」
アスキー「あんまり猛者っぽくない異名ですな」
ミノタウロス「まあ、ね。気分次第で4階にいるときもあるからな」
ケルベロス「バンパイア! ぺディグリーチャムくれるっていうから来たけど、よりによって相手はミノタウロスじゃないか! ひどいよ!」
現れるや否や、涙目だ。
 
2005/11/20
ミノタウロス「ケルベロス! アタシに逆らったらどうなるかわかってんだろうな?」
ケルベロス「ひ… ひんひん、苛めないでよう…」
バンパイア「ケルベロス、勇気を出すのよ。貴方ならできるわ。頑張ってくれたらビタワンも付けちゃうから」
ケルベロス「び、ビタワン…」
ケルベロスの尻尾がぴょこぴょこ揺れる。
ミノタウロス「バンパイア! 卑怯だよ!」
バンパイア「何とでも仰いなさい」
ケルベロス「ミノタウロスごめんね… でも、生き物は食べなきゃ生きていけないから…」
ケルベロスは身構えた。どうやら悲壮な感じにやる気になったらしい。
そして、彼女を包んでいた青白いオーラが形を変え、獰猛な表情の犬の姿を形作ったと思うとそれらはアスキーたちに向かって飛来した。
ミノタウロス「チッ! 結局食べたいだけじゃんね!」
アスキー「姐さんに言われるのは屈辱ものだとお」

バキッ

アスキー「な… 仲間割れは良くない…」
 
2005/12/10  一撃必殺猪突猛進、まさに無骨な狂戦士
ミノタウロスはゆっくりと自分の獲物を持ち上げる。
そのあまりのモノに、ケルベロスもバンパイアも一瞬たじろいだ。

大きく振りかぶり、地面に一撃。
ゴンという轟音とともに地面には大きな窪みができていた。

ケルベロスとバンパイアは改めてミノタウロスを見つめる。
いや、正確にはミノタウロスが振るう武器を。

それは
 武器というには
  あまりにも大きく
   重く
    大雑把だった

それはまさに──

バンパイア「……ミノ、それ武器じゃなくてアンタの相棒」
ミノタウロス「えええーっ!?」

振り回されていた武器「アスキー」はまさに肉塊だった。
 
2006/01/01  何かが明けたそうです。
ケルベロス「ふふ……ふふふふふ……あははははははーーーっ!」
バンパイア「!? 突然隣で大声出して笑わないでよ! ビックリするじゃない!」
ケルベロス「いやいや、ついに私の時代が来たものですから」
バンパイア「時代?」
ケルベロス「はい。今年一年は東洋の陽出ずる黄金国の暦の都合で犬の年なんです」
バンパイア「……はぁ」
ケルベロス「今日この時まで戦闘をズルズル延ばした甲斐があったってものです。今の私は牛に強い事間違い無しです!」
ミノタウロス「って言う事は私の年もあるの?」
ケルベロス「3年後に」
ミノタウロス「長ッ!」
バンパイア「私は?」
ケルベロス「蝙蝠年も吸血鬼年もありません」
バンパイア「……………いいもん、いいもん」

ケルベロス「とにかくです! 今年も一年よろしくお願いしますという意味を込めまして戌年アターーーックッ!!」
叫ぶなりケルベロスのオーラが3頭の狗に形に変えて攻撃してくる。
ミノタウロス「な……この力……本当にパワーアップしているのっ!?」
ケルベロス「今年一年私が主役ですから! さぁ行って! ヨーゼフ、ジョリー、パトラッシュ!」
ミノタウロス「何処の名作劇場だそれは!」

忍者「……其処の肉塊。何か語る事があるのなら聞いておこう」
アスキー「……主役は俺なんだが、とりあえず今年もよろしくだ」
忍者「承知。では拙者は是で……御免」
 
2006/01/02  山が動いた
アスキー(…俺は主役なのに… 何故やられ役?)
アスキーは薄れ行く意識のなかで、自らの運命にちょっとご機嫌斜め。
アスキー(くそつ、身体が動かない… 今度こそお陀仏なのか?)
アスキーはちょっと年貢の納め時。

???「全く… 世話が焼けるのぅ」

アスキー(えっ?)
アスキーの身体を七色の光が包み込む。アスキーの体力が回復した!
スフィンクス「早く立つんじゃ! 若者じゃろ!」
目の前には、自称賢者のモンスターが立っていた。

……
………アスキーは身の不遇をスフィンクスに散々愚痴った。

アスキー「というわけなんです、よよよ」
スフィンクス「あの馬鹿娘どもが。話が進まんではないか」
アスキー「話がどう、とかいうのはよくわかりませんが何とかしてください。もう俺、挫けそうです」
スフィンクス「しゃあないのぅ。では、作戦を授けよう」
アスキー「ほんとですか!」

スフィンクス「それはの…」
 
2006/01/05  賢者は奇策に頼らない
アスキー「おやっさん、で作戦とは?」
スフィンクス「だぁれがおやっさんじゃ! 爺さんと呼べ!」
アスキー「喜ぶトコでしょ、ここ… まあいい。で、作戦とは?」
スフィンクス「賢者は老すら喜びと共に受け入れるものなのじゃよ… まあよいわ。で、作戦じゃが。まず、お主は一旦1階まで戻れ」

アスキー「ええっ! また1階? 折角4階まで来たのに勿体無い」
スフィンクス「しゃあないんじゃ。お主は弱すぎる… 死なないだけが取り柄じゃ。じゃがそれでは間違いなく死ぬ。仮に幸運が味方して6階に辿りつけても死ぬ」
アスキー「そ、そうなんすか」
スフィンクス「それには理由があるんじゃ… 牛のお嬢ちゃんでも6階は荷が重過ぎる…」
アスキー「…わかった。1階に行くんだな。で、どうすればいいんだ?」
スフィンクス「経験を稼げとは言わん… それを待ってる間にこのノートスペースが期間満了でサービスを終了する」
アスキー「そ、そうだったのか! じゃ、じゃあどうすれば」
スフィンクス「1階の何処かに、怪力女がいる。そ奴を味方につけるのじゃ。そして、あとは運に任せよ。さすれば道は開けん」
アスキー「ど、どういう事なんだ?」
スフィンクス「わしの読みが正しければ、お主は地上では手に入らない力を手に入れるじゃろう… わしが言えるのはここまでじゃ」

2006/01/07  というわけで1階です
アスキー「ひさびさの1階だな…」
アスキーは1階に辿りついた。ひさしぶりの1階は、どこか懐かしい匂いがした。
アスキー「さて、怪力女とかいうのを探さないとな… まずは情報収集だな」
アスキーは情報を集めることにした。
アスキー「怪力女を捜しているんだが、心当たりは無いか?」
マミー「敵発見。攻撃します」
ビュンビュン
アスキー「うわっ! 何をするんだ!」
マミー「馴れ馴れしい! 敵相手に情報集めなんてしないでよ!」
ビュンビュン
アスキー「だ、だってこの塔基本的に敵しかいないし…」
マミー「壁の落書きを読めばいいじゃない!」
ビュンビュン
アスキー「読めないんだよ! もういい! 頼まない!」
アスキーは逃げ出した!

アスキー「ふう、危ないところだった」
アスキーは、EXPこそゼロだったが、ハイレベルの戦いに参加していたので、マミーの攻撃程度なら楽勝でかわせるようになっていた!
 
2006/01/10  相変わらず1階です
アスキー「参ったなあ… 怪力女やーい、出ておいでー」
アスキーは半泣きになりながら怪力女を探した。マルコのように探した。
大さそり「あらっ、お兄ちゃん久し振り!」
おおさそりがあらわれた!
アスキー「お前が怪力女か!」
大さそり「はぁ? 何言ってんの?」

………
……………
アスキーは自分の境遇を散々ぼやいた。

大さそり「なるほどねっ。怪力女には心当たりがあるよ!」
アスキー「本当か!」
大さそり「まーかして頂戴。でも、タダじゃ教えないわ」
アスキー「な、何ー!」
大さそり「交換条件と行きましょう。この1階の何処かにあるという伝説のオヤツ、オオサンショウウオの黒焼きを持ってきてくれたら教えてあげるわ」
アスキー「ちょっと、一昔前のおつかいRPGっぽくなってきたな…」
 
2006/01/15  極論すればゲームってのは全てポジティブなおつかいなわけで
アスキー「半年経っても相変わらず食い意地張ってるな!」
大さそり「うるさいわよ! とっとと取ってきなさい!」

アスキーは追い出された!

アスキー「まいったなあ… マトモに会話できるモンスターって、あと誰かいたっけかなぁ…」
アスキーは途方に暮れてとぼとぼと歩いた。
途中、パタパタ飛び回ったり目玉を飛ばしてくる女の子モンスターが襲い掛かってきたが、赤子の手をひねるより簡単に逃げた。
マミーもしつこく襲い掛かってくるが、鼻歌歌いながら逃げた。
魔法使いも復活したようで現れたが、どうやら根に持つ性格なようで話しかけても相手にしてもらえなかった。
三目から助けてあげたのは自分なのに… ちょっと切なくなりながら逃げた。

アスキー「…ん? ちょっと感じが違う部屋に出たな」
 
2006/01/31  激戦
アスキー「…この部屋は、ちょっと雰囲気が違うな… むっ、あれは?」
アスキーの視界に、人影が見える。その先には、2階への階段があった。
人影もこちらに気付いたようだ、こちらの様子を伺っている。鎧を全身に纏った戦士のようだ…

アスキー「そこな戦士さま、ちょっと探し物をしているのでもし御存知でしたらおし
アスキーが物を尋ねようと近付いたその時、戦士は大剣を構えるとアスキーに斬りかかって来た!

アスキー「どひゃう!」
アスキーはかわした!
アスキー「な、何すんのさ! こちとら丁寧にお伺いをたてて
アスキーが言い終わるまで待たずに、戦士の次の斬撃が襲い掛かる!

アスキー「ほわたぁ!」
アスキーはかわした!
アスキー「もう怒った! 来るなら来い!」
 
2006/02/12 
 天井が湿っています。
 ”大量の水が天井にあるようじゃ”と親切丁寧に書かれた落書きがありますがアスキーは視線すら投げません。
 ラクガキの言語が判らないのもあります。
 ですが、それ以外にも問題点があります。
 それは。

アスキー「っつーか階段の門番じゃねぇのか!? それに扉を抜けたら絶対戦闘回避だろこのゲーム!」
 戦士がいた部屋の外周を既に何周したのか覚えていない。
 本当にソレヘビーなアーマーかと言うぐらい軽やかなスピードで戦士はアスキーの後を追いかけてくる。

アスキー「くそっ、こうなったら漢の意地で一撃くらい……」
 そう思うが、何分コッチはダガーであっちはヘビーな鎧だ。
 せめて魔法か武器かを用意しなければ話し合うにしても戦うにしても同じ土俵にすら立てない。
 やれやれ、全くヘビーだぜ。

アスキー「せ、戦略的一時名誉撤退! スピードアップだ、パイルダーオン!」
 「はいなっ」
 アスキーの意味不明な叫びに何者かが答える。
 同時に後ろからがしっと抱きつかれたかと思えば。

アスキー「え……?嘘おおおおおっ!?アリエネー!」
 アスキーの足は、いや全身は抱きつかれた腕に引き上げられて地面を離れ、物凄い勢いで空中を飛んでいった。
 
2006/04/26
アスキー「……こうして逃がしてもらった事には感謝するけど」
????「どもどもっ」
アスキー「結局お前ってば何なの?」
ファイターとの追いかけっこに決着をつけた奇跡の急速飛行。
ソレは勿論アスキーが自力で飛んだわけではなく、彼女がアスキーを掴んで飛んだからであった。

????「私? 私は大こうもり。大さそりに頼まれてキミを探してたんだ。『お兄ちゃんの事だからどーせどっかで困ってるはずだよ』 …って」

アスキー「……それはそれは。それで、どうやって助けてくれるんだ?」
どこかで拾ったイモリの黒焼きを軽くかじってスタミナを補給する。
正直塔の中で食ってる食料はコレばっかりだ。
大こうもり「とりあえず経験を積まないと駄目だね。それで……気長に地道にのんびりマイペースなレベルアップと、短期間一気にレベルアップ、どっちがいい?」
アスキー「その内訳は」
今までこういう質問にすぐ答えてきたからロクな目に遭わなかったのだ。今度はちゃんと確認をとる事を怠らない。

大こうもり「マミー、大サソリ、そして私の3人を相手にとにかく戦うのがマイペース。
 で、カタコンベ(地下墓地)で幽霊相手に戦うのがスパルタ。
 取り合えず文字の勉強と1階のアイテム収拾が先だけどね。その間に決めといて」
 そう言うと、大こうもりはゆっくりとアスキーを先導して飛び始めた。

 なんにせよ、何を企んでいるにせよ。
 今はこの気まぐれコウモリについて行くしかないようだ。
 
2006/04/27  やっぱりアスキーはアスキーだった
アスキー「決めた。地下に連れて行ってくれ!」
アスキーは力強く言った。気長に物事を進めるタイプではない。
日記も家計簿も2日でゴミ箱行きな男である。仕方ない事であった。

大こうもり「ほんとに? じゃあ、さっきのトコ戻るよ」
アスキー「えっ? あの戦士の処に?」
大こうもり「しょうがないじゃない、地下にいくには彼女に頼るしかないの」

10分後。アスキーは戦士の前にいた。
ファイター「先程は失礼した。上へ行こうとしているのかと早合点してしまった」
アスキー「い、いえ」
大こうもり「この人、地下に行きたいだけなの。ちょっとお願い」
ファイター「了解。では失礼」

ファイターはアスキーを持ち上げた!
アスキー「えっえええーっ!」
ファイター「むんっ」

アスキーは思いっきり地面に叩きつけられた!
アスキー「ふごー」


大こうもり「行ったかな?」
ファイター「…死んでなければ到着した筈…」

……
………
アスキー「・・・・・・う、うう・・・・・・」
アスキーは目覚めた。あちこち痛むが事前に食べていた黒焼きのおかげで命拾いしたらしい。
アスキー「・・・こ、ここは・・・?」
目前には禍々しい模様と毒々しい朱に彩られた壁があった。
 
2006/05/10  終わりが近づいている?
アスキーは辺りを見回してみた。
左確認。なんかエネルギーの壁がある。
右確認。なんかエネルギーの壁がある。
前確認。なんか台座がある。でも何も置いてない。
後確認。
アスキー「うわっ!」

後ろには人がいた!
???「何者だ!」

ビュン

謎の男の攻撃! アスキーはかわした!
アスキー(な、なんて早さだ! 偶々かわせたけど… 当たったら即死だ!)
???「ほう… 透明人間なみの回避力だな」
アスキー「あんたこそ何者だ! 俺は敵じゃないぞ! …たぶん」
???「そうなのか」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

テイコク「そういう事か。俺はテイコク。この塔のてっぺんを目指しているんだ。じゃあ目的は一緒だな」
アスキー「俺も連れて行ってください」
テイコク「いいぜ(大航海時代ふうに)」

テイコクの仲間になった!
 
2006/05/11  あと数回なのに話を広げたり。
 一方、塔の外にあるアスキーの拠点。

 テントの傍に一つの人影が動いていた。
 人影がテントに触れようとすると、青白い幾何学模様が蠢く障壁にその手が阻まれる。
「防犯魔法……生きてるのね、このテント」
 その人影は再度手を近づけ小さく何かを口ずさむと、幾何学模様がその動きを突然静止した。
 人影はそのまま障壁をすり抜けてテントの中へと入ると、中に散らばった生活用品を確認する。
「ふむ。調合鉢もマナ石も無し……戦士系だけみたいね」
 それだけ理解すると人影はテントから這い出した。そして塔に歩いていく途中で口ずさむ。
 ソレを合図に止まっていた障壁は思い出したかのように蠢きだし、対侵入者用の退治魔法を発動させた。

 ソレはまるで防犯魔法の障壁だけが時を止められたかのような動きだった。

「……定時連絡を数百年単位でサボり腐って、何やってるのさ、あの落書き魔は」
 ツバの大きな三角帽を被りなおし、黒いマントの砂を叩き落とす。
 塔の入り口になる扉を見つめ、人影はつぶやいた。
「閉鎖輪廻のウロボロス……でもね、尻尾を食べた蛇は尻尾を食べられた事で変化してしまっているのよ」
 そして再び何かを口ずさむ。
「時の流れに対し0乗算すれば解は0。即ち、時の流れは0となる。法則を享受せよ……PAUSE」
 途端に扉の魔力が効果を失う。いや、扉自体が世界に置き去りにされたような感覚を受けた。
 そっと押し開け、人影が中へと入る。扉を閉じるとやはり何かを口ずさんだ。
「乗算の値を1増やそう」
 それだけで入り口の魔力が復活する。いまや世界から切り取られたような疎外感は微塵も無い。

「……やっぱり落書きしてるわね。まあいいわ、コレを追って行けばどこかに居るんでしょう」
 壁や床の傷を見る限りここでは戦闘が起こる様だが、人影は特に気にしない。
 何せ自分を傷つける事など誰にもできないのだから。

「そう。真に時が止まった状態であるこの”刻繰り”ジラには、ね」
 落書きに対して軽く微笑むと、ジラは落書きを探しながら迷宮の奥へと歩いていった。
 
2006/05/11  負けないぞー
そのころ、アスキー達は…
アスキー「旦那、どうやってここまで来たんでげすか」
テイコク「ああ、俺は魔法が使えるからな… DOWN、という魔法で一階から降りてきた。でも、厄介なのは、上がる魔法は難しいから覚えてないって事なンだよな… どうやって戻ろうかな」

アスキーはテイコクをよくよく観察してみた。
筋骨隆々たるその体躯。
その身を固めるのはよく見ると先程自分を馬鹿力で此処に送り込んでくれた、女戦士のものと同一だ。
手に持つ得物は、光り輝くオーラを放つ長剣。
背嚢にはサブの武器であろうか、並の人間に取り扱えるのか疑問が残る巨大な剣。
もう一方の手には鈍い光を放つ宝石が幾つもついたお守り。
この男、魔法も使えると言ったが恐らくこのお守りの力を補助として使っているのであろう…

テイコク「ん? どうしたんだ?」
アスキー「いや、旦那恐ろしく強いみたいでげすなあ」
テイコク「ああ、そりゃそうさ… この塔の探索に一体どれだけの時間を費やしたかわからない。その過程で強くなってしまった。これ以上強くなれるのかは俺にもわからん」
アスキー「で、戻り方なんでげすが、私めが落ちてきた穴がございます。この穴をのぼれば1階でげす」
テイコク「おお! それは良い。礼を言うぞアスキー」
アスキー「ありがたき幸せでげす」
 
2006/05/24  時を駆ける魔少女……少女?
 2階への階段を守護するファイターは、ジラの姿を確認するとその前に立ちはだかった。

「そこ、どきなさいな」
「……何者かは知らないが、ここは誰も通せん」
「そう」
 ジラは一度頷くと傍の壁に指を向け、呪文を唱えた。
「四散する光線ベクトルは魔導連立式にて期待値へ収束する。RAY」
 指の先に強烈な光弾が発生し、直後その光は一筋の線となって幾重の壁を貫いて外界へと飛び出していった。

「そこ、どきなさいな」
「……はい」
 あっさり屈したファイターは道をあけると、ジラはにっこりと微笑んでお礼を言った。
「ありがと。ごめんね、驚かせて」
(いやもう今のは驚かせるってレベルじゃないから)
 内心突っ込みを入れつつ壁に開いた穴を見る。
 いくらファイターの鎧の防御力が高くても、あの絶対的な暴力には耐えられそうもない。
 逃げ出さなかったのは使命があるからではなく、ただ足が動かなかっただけだ。
「あ、そだ。ねぇ、ローブを着てあちこちに落書きしまくるおじさんを見なかった?」
「……直接は見てないが、上のほうにいるって話は聞いたことがある」
「そ。ありがと」

 もう一度にっこり微笑むと、ジラは階段を登っていった。
「……な、何なんだアレは!? 洒落になってないぞ!」
「まったく本当だよ」
 侵入者に気づいて物陰で隙を狙っていた大こうもりが冷や汗をたらしながら戻ってきた。
「この塔の壁は主の魔力で護られてるってのに、それを簡単にぶち抜くなんて」
「……私らじゃダメだ。今のに対抗するならリッチかバンパイアぐらいでないと」
「彼女たちでもきついと思うけどなぁ」
 二人はジラが登っていった怪談を見つめながらつぶやいた。

「ところで兄ちゃんの方はマダかな?」
「……上手くいってればそろそろ戻ってくるはずだけど」
 今度は地面に視線を落とし、二人はふぅと溜息を吐いた。
 
2006/05/31  女二人でも姦しい
大さそりと大こうもりがアスキーが落ちていった(作り出した)穴を覗いていると、奥底からガツガツという音が聞こえてきた。
大こうもり「なんか戻ってきたみたい」
大さそり「幽霊にコテンパンにされちゃったのかな?」
大こうもり「だったら戻ってこないでしょ」
大さそり「じゃあ、例によって逃げてきたのかな?」
そんな話をしている間にも音は段々と大きくなっていき、ついに二人はアスキーの姿を視界に捉えた。

アスキー「旦那、すみませんでげす」
テイコク「お前、ちょっと重いよ…」

そこに見えたのは、テイコクにおぶさって情けなく薄ら笑いを浮かべている主人公の姿であった。

ザッ

テイコク「1階とうちゃーく。ああ疲れた」
アスキー「お疲れ様でげす」
二人が一緒に居るのを見て、女の子達が悲鳴を上げる。

大さそり「お、お兄ちゃん!?」
大こうもり「なんでその男と一緒にいんのよ!」
アスキー「んあ? この旦那に助けて貰ったんだ」
大さそり「そんな人と一緒に居ちゃダメ!」
大こうもり「そうよ! ソイツは手当たり次第にアタシ達に切りかかってきて、○×▲□(自粛)なことする悪党よ!」


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